ほくそんの図書室

気まぐれな小さい図書室。

『AIに負けない子どもを育てる』

 

76)続編

 

 

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第1章 AIの限界と「教科書が読めない子どもたち」

 

2011年から「ロボットは東大に入れるか」という人工知能のプロジェクトを行ったが、東ロボが意外にも苦戦したのは様々な「図」であった。

 

そして、2021年1月に現在のセンター入試の後継である「大学入学共通テスト(新テスト)」が始まり、国語と英語の長文読解に対して歯が立たないこと、イラスト理解の目処が立たないことなどから東大突破は無理だろうと示した。

 

これまで、AIの性能を図るためのテスト問題集(ベンチマーク)として、「日本大学入試問題」を扱ってきたが、過去問が圧倒的に少なく、深層学習の威力を発揮しにくかった。

 

そして生まれたのが「答えが書いてあるのに解くのが難しい不思議なテスト」リーディングスキルテスト(RST)である。

 

しかし皮肉なことに、人間のAIに対する優位性を明らかにするつもりが、人間の読めなさ加減を晒すことになった。

 

第2章 「読める」とはなんだろう

 

正しく読むためには、字が読めて十分な語彙力があること、そして、文の作り(構文)を正しく把握し、機能語を使えることが必要である。

 

※機能語と言うのは「と」「に」「ならば」など文法的機能のみをもつ語のこと。

 

機能語を正確に読みこなせないと教科書を読んでも意味がわからない。そういう生徒は例えば歴史の教科書を読むときに、キーワードの群として捉えようとする。例えば「徳川家光、参勤交代、鎖国」のように。

 

まさにAIがそのように読む特性があるのだ。

 

暗記量とその正確さで圧倒的に勝るAIに、AI読みをする人間が勝てるわけがない。

 

というのも読解の基礎を学校の国語の時間に教えられてこなかったことに問題がある。

 

新しい指導要領では、高校で「論理国語」という新しい科目が導入される。小中学校でも、長く続いた文学偏重から、事実について書かれた文章を正確に読んだり書いたりできることにも重きが置かれるようになる。

 

 

第3章 リーディングスキルテスト、体験!

 

割愛

 

 

第4章 リーディングスキルテストの構成

 

係り受け解析…文の基本構造を把握する力

②照応解決…代名詞などが指す内容を認識する力

③同義文判定… 2つの文の意味が同一かどうかを判定する力

④推論…基本的知識と常識から、論理的に判断する力

⑤イメージ同定…文と非言語情報(図表など)を正しく対応付ける力

⑥具体例同定…定義を読んでそれと合致する具体例を認識する力

 

 

第5章 タイプ別分析

 

・前高後低型…係り受け解析、照応解決、同義文判定6点以上、推論、イメージ同定、具体例同定の2つ以上が3点以下という層

・全分野そこそこ型…推論、イメージ同定、具体例同定のどれかで3点、他ほぼ6点

・全低型…読みの基本となる係り受け解析か照応解決のどちらかで3点

 

 

第6章 リーディングスキルテストでわかること

 

RSTでわかること

・基礎的、汎用的読解力。知識は問うていない

・教育関係者が抱いた疑問や仮説を大量のデータで科学的に示すこと

 

RSTでわかってきたこと(仮説段階)

・高校のRST能力値の平均とその高校の偏差値には極めて高い相関があること

・中学生は学年が上がるに従ってRSTの能力値が全体としては上がる傾向があるが、分散が大きすぎるため、相関係数が0.1程度に留まること

・高校生は全体としても個人としてもRSTの能力値が自然に上がるとは言えないこと

・中学生では個人のRSTの能力値と学生の成績には中程度の相関があること

・中学生の学校外での学習時間とRSTの能力値に相関は無いこと

・出題される問題にルビを振っても統計的には正答率に差がないこと

・就学援助率の高い学校ほど、RSTの能力値が低いこと

 

 

第7章 リーディングスキルは上げられるのか?

 

前著で紹介したRSTの問題を毎日やらせる学校が出てきたが、読解力を授業の中で上げるには、自分たちで努力をしないといけない。

 

そこで、埼玉県戸田市、東京都板橋区富山県立山市などに協力してもらい、「どんな学校で、どんな授業をしているところで、どんな読解力の課題があるか」を調べつつ、「どうすれば、読める子を育てる授業になるのだろう」ということを現場の先生方や教育委員会と一つ一つ分析をしていくことにした。

 

その中で効率よく算数や漢字や、重要キーワードを覚えさせるためのプリント・ワークシートの多用により、「文章として」読まなくてもテストでそれなりに良い点が取れてしまうということが分かってきた。

 

ゆえに「小学校を卒業するまでに板書をリアルタイムでうつせるようにする。小学校のうちに穴埋めプリント卒業する。そして、中学校ではプリントは使わないことを目標にする」こととし、20年かけて失った能力を回復しようとした。

 

 

第8章 読解力を培う授業を提案する

 

小学校4年生国語 単元名「正しく伝えよう」 目標「無駄なく正確に文章で伝える」

使用するものはオセロ、黒板、チョーク、付箋。

 

この授業では、オセロの玉を「並べた状態」と、その説明を正確に結びつける「イメージ同定」の力を育むことを第一目標として捉える。加えて、新しい言葉、特に辞書的な言葉の定義の仕方を強調し、その言葉の使い方を直後に確認することで、具体的同定の力を高める。加えて、複数の文が同じ意味を表すか、表さないかを吟味することで同義文同定の力を養う。

 

本章では単元名「偽定理の見つけ方」など3つの授業案を掲載しており、全て「国語」の授業でやるべきだと思っている。

 

ではそもそも「国語」とはどんな教科なのだろうか。

国語の役割を理解する上で注目すべきは、学校教育法第21条第5号「読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。」

 

つまり、国語の目的は「生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと」である。

 

また「読書」というのは小説だけでなく、百科事典なども対象となる。

 

では文芸はどうかというと、第9号「生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。」

 

法律上、文芸は音楽、美術と同じ「芸術」枠になる。

 

しかし現実では詩や古典など文芸作品ばかりであり、国語教育を見直す時期になりつつある。

 

 

第9章 意味がわかって読む子どもに育てるために

 

言葉と倫理と数量の感覚を生まれながらに持っているので、外界や身近な大人に高い関心を持つ幼児期や低学年のうちにそれらを観察したり、真似をしたりルールを教わったりする機会を設定したい。

  

 

第10章 大人の読解力は上がらないのか?

 

大人になっても読解力は上がる。

 

ゆっくりでも正確に読むこと、どうして読み間違えてしまったのか分析することなど、地道ではあるが確実に自分の糧になり、仕事にも影響がある。

 

 

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第9章で子どもが育つ理想的な環境について細かく述べられていた。さて一体どれくらいの家庭がそのような環境を整えられる経済的、精神的余裕があるだろうか…と考えてしまった。

 

格差をなくすために公教育があるわけだが、果たして様々な家庭環境の子どもがいる中でどれだけのことができるだろう。

 

 

体験版RSTは推論が3点汗、同義文同定・具体例同定(理数)が5点、他6点以上と自慢できるような点数ではなかったので、「ゆっくり確実に読む」ことを意識しながら読書活動を進めていきたいです。

 

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