96)読みたい本が手元にありすぎて買うのを見送っていたが、読んだ人が「面白かったよ」と教えてくれて購入を決めた本。
副読本「ゴッホのあしあと」も一緒に買いました。
ストーリーも面白かったけれど、読み終わった後の囶府寺司さん(大阪大学教授美術史家)の解説を読むとどきどきした。
林忠政とファン・ゴッホ兄弟が同じ時期にパリにいたことは間違いない。しかし、彼らが接触していたことを示す証拠はこれまで知られていない。ファン・ゴッホの手紙に林の名前は現れないし、現存するテオの住所録にも林の名前はない。しかし、狭いパリ美術界のこと、彼らがパリ市内の通りですれ違っていたとしても、あるいは挨拶ぐらいする仲になっていたとしても決して不思議ではない。
事実もあるのだけれど、歴史的に解明されていないことを原田さんの発想でフィクションを織り交ぜて一つの作品となっている。原田さんは歴史学を学んだ作家さんでもあり、歴史的に曖昧なところを架空の人物を登場させることでリアリティがグッと上がる。
おもしろい。
たゆたえども沈まず
カバー=重実生哉
装画=フィンセント・ファン・ゴッホ〈星月夜〉
幻冬舎文庫 / 2020