ほくそんの図書室

気まぐれな小さい図書室。

『ストロベリーライフ』

 

95)弟が捨てると言うので、それならと思っていつか読もうと思っていた本。

 

デザイナーの恵介がちょっとしたきっかけでいちご農園を手伝うこととなった話です。

農家の苦労、食べ物を作る苦労、田舎のコミュニティでの苦労などがリアルに書かれていました。

 

例えば

 

残り少ない花にいまから受粉しても、実が育つ前にシーズンが終わってしまうから交配蜂たちはもうお役御免。恵介はまだぐずぐずしているが、よその苺農家は、すでに「処分」済みだ。処分というのは、巣箱に熱湯をかけるか、袋に詰めて太陽熱で蒸し焼きにすることだ。かわいそうだが、購入した蜂の『資材説明書』にはマニュアルのひとつとしてそう書いてある。伝染病予防や生態系維持のために外へ逃がすのはご法度。(略)自然に翻弄される日々を送っていると、人間の傲慢と無力をつくづく思い知る。

 

以前読んだ『自然という幻想』を思い出しました。『もやしもん』の「農への関心がえらい低いくせに 安全で安くて安定したモンを欲しがりやがる 虫がちょっと商品に入ってりゃ上を下への大騒ぎだ」のセリフも。

 

 

 

人間は自然に優しく食材にも優しい無農薬を、なんて言いますが、自然はそんなこと求めていなくて、きっと人間のことなんて嫌いだろうな。

 

せめて賢い消費者になれるように農業のこと知りたいなと。

 

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ストロベリーライフ

萩原浩

装画=龍神貴之

毎日新聞出版 / 2016