103)このリストの中にあった「ありのままがあるところ」を読みました。
鹿児島県にあるしょうぶ学園は、社会福祉法人太陽会が運営するライフサポートセンターで、施設入所支援やショートステイを行っているところです。
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作者は父が福祉施設を運営しており、アメリカ留学から帰国後学園で働くことに。「スノコを作ってくれないか」という依頼を受けたのをきっかけに「工房しょうぶ」を立ち上げたが、利用者の意図とは違う決まったもの依頼されたものを作ることに対して、職員が指導することに違和感を感じていた。
楽しそうに木くずにしたり、掘り過ぎたりしていることをやめさせて、難しいことを克服させ、できなかったことをできるようにすることが、彼らにとって本当にいいことなのか分からなくなっていった。
けれども彼らには、できないことを克服しないといけない理由がまったくない。なのにどうして私は彼らをがんばらせて私たちの意図する目的をやり遂げさせようとしているのだろう。できないことができるようになるのが良いのだろうという考えがぐらついて来たのは確かだ。
これは工房だけでなく、生活の様々な場面でも見られた。障害を持っていると「あれをしなさい」「これをしなさい」と言われる。自分の思いを言葉にできないもどかしさを抱えているのかもしれない。障害が重度であればあるほど、自己決定能力とその条件が乏しいほど、関わる職員の姿勢が問われる。だからこそ、利用者の自己決定を促すための環境や働きかけの工夫を独自に行わなければならない。
しかし、彼らの感情を理解するのは難しい。だからこそ、私たちは、彼らの世界を想像し、そこに身を置いて、情動の意味を理解しようと努める必要がある。
国は、障害を持つ人たちは施設で暮らすのではなく、地域で暮らしましょうと推進してきた。1989年に施設から地域に移行した頃は、障害者が地域社会を歩き回り、存在そのものを他者に認知されることが第一歩であった。
その後、地域生活の目的は、「障害者の主体性のある生き方を考えること」になったが、地域で暮らしていても人とのかかわりがなければ、その目的は達成されない。誰もが地域のグループホームに入所すれば良いというわけではない。
今でもその人が自立(単に独り立ちするという意味ではなく)するために支援を行うことは必要だと思います。だが、その支援がこちら側の都合になってはいないか、その支援によってその人の人生がより良いものになるのか、支援する側は慎重になるべきだと思います。そして、今後も支援するということはどういうことなのか、日々気づきを得ながら学んでいきたいと思います。(働き始めて3ヶ月の職員が書いたレポートより抜粋)
相手をきちんと見て、その人が今やろうとしていることと、どんな気持ちでそうしようとしているのか、そこに寄り添える人が少しずつ増えつつあることは大変嬉しいことだ。
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実は半分くらい読んでそのままだったのですが、この記事を読んで全部読みました。
もうひとつの美術館にしょうぶ学園の作品が来るんです!!
うれしい。行けるといいな
ちょうど障害者支援施設で実習していた時期に読んだのでタイムリーな時期でもありました。全てを真似ることは難しいですが、利用者の自由意志を尊重できるところが増えるといいなと思います。
ありのままがあるところ
福森伸(しょうぶ学園施設長)
装画=有川るり子
晶文社 / 2019