60)『数学する身体』を読んでから”数学史”面白いなと思って手に取った本。
イラストが多彩で分かりやすかった。
中でも面白いなと思ったものをピックアップ。
ピタゴラス流宇宙観とその破綻
これらの数(正の整数とそれらの比)をもってすれば、宇宙にあるすべてのものを測ることができる。いいかえれば、正の整数とそれらの比に表せない幾何学上の量は存在しない。(略)ところがピタゴラス学派の人々はそのような長さ()が整数や整数の比で表せないことを発見した。一辺の長さを1にするかわりに、対角線の長さを1にすると、今度は一辺の長さが整数や整数の比で表せない。
これは面白いと思った。まだ√(ルート)の概念がなかったときに、整数だけで全てを表せると思っていた人たちに衝撃を与えたことであろう。ピタゴラスの定理によれば、正方形は辺と対角線の2つの長さがあり、どちらか一方が分かれば、もう一方が決まる。例えば一辺を1としたとき、その対角線の長さは二乗して2に等しくならなければならない。しかしそのような長さを整数で表せないことが分かったのである。
人が新しい発見をした時の過程って面白い。自分で立てた定理によって自分の考えが崩されるのって面白い。
第7章 数と人間 冒頭より
数が普及するにつれ、人間は数にとらわれるようになった。数の利用範囲は日に日に広がり、人間の生活全般を覆いつくしている。現代社会は数に絶大な信頼をおいており、何にでも番号をふり、数量化してしまう。だが、数値化は往々にして貧困化をまねく。数という美しい発明物が、人間の生活を貧しくするようなことがあってはならない。
数値で表すことによって分かりやすくなるものもあれば、逆に分かりにくくなるものもある。数字が全てではないということを念頭に様々な数字に触れたい。
算数数学というと計算や証明が浮かぶが、それだけに留まらないことを知った。小学校で習う筆算も、はじめは数の記録と計算に分かれており、そこにインド式位取り記数法と紙が現れ、今の形となった。文明の発展に伴って数学も解明されていく感じが面白い。
- 作者: ドゥニゲージ,藤原正彦,Denis Guedj,南条郁子
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 1998/04/01
- メディア: 単行本
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